完全きまぐれ 神のみぞ知る世界 SS 《歩美編》

久々更新でこいつなにやってんだ状態かと思いますが

神のみみたらどうしても書きたくなったのです。

 

別に最終回に納得してない訳じゃないんです。でも他のヒロインにも幸せなエンドを用意したかっただけなんです。ちひろが嫌いとかそういうんじゃないんです!みんなかわいい。各ヒロインでエンド書けたらいいなぁって思います。

 

感想は気軽にどうぞ、誤字脱字、改行が気になる等は適当に直していきますので多めに見てください。あくまでも個人の二次創作ですので色々と不備等があるのは許してください\(^o^)/

 

神のみぞ知る世界《歩美編》

 

ちひろの元に向かった桂木に女神達を含め彼女達は納得していなかった。

特に結婚の約束までした歩美には親友のちひろの為とは言え心の中では納得していなかった。

歩美(ちひろに告白までした桂木を今更、私と結婚しろっていうのは無理よねー)
メリクリウス(諦めるにはまだ早いんじゃないか?)
歩美(そうは言っても桂木はちひろの元に行ったんだからもう桂木を好きでいることなんて出来ないよ)
メリクリウス(別に好きな人がいる人を好きでいちゃいけないのか?)

歩美「うっ」
歩美は自分の心に残っていた桂木への恋心を親友のちひろの為という理由で諦めようとしていた。
だが、誰も桂木を諦めろと誰かに言われた訳ではない。あくまでも私はちひろの為に自分の恋心に蓋をした。


そのつもりだった。


だが、蓋をしただけであって恋心がなくなった訳ではない。その蓋をメリクリウスに外され溢れ出た好きの感情に
歩美の胸が傷んだ。


歩美(だってどうしようもないじゃない)
メリクリウス(歩美はちひろに譲ってやったという優越感が欲しいのか?)
歩美(そういうわけじゃない!桂木がちひろを選んだんだから別にそういう訳じゃない!)

歩美は自分が振られたという事実をちひろに譲ったということで平静を保とうとしていた訳ではない。
でも、そう考えることで自分の心に嘘をついていたのは事実だった。

メリクリウス(確かに彼はあなたの親友の元にいった。でもそれで諦められる程度の愛だったのあなたの彼への愛は?)
歩美「そんな訳ないじゃない!!」

歩美はメリクリウスの言葉を聞きたくない一心で走り出す。
モヤモヤとした気持ちを走ることで忘れてしまいたかった。


メリクリウス「今のあなたの走りはなにかに向かっていくいつもの走りじゃない、なにかから逃げる走り。
それじゃあなたは前に進めない」

いつも眠そうに気だるそうにしているメリクリウスなのに今日はとても饒舌だ。

歩美「うるさいわね!私は諦めたんだからこの恋は終わったんだから!」
そういって歩美はドンドンスピードを上げる。

だけどいつもの風を切って走る心地よさはなく肌触りの悪い風が纏わりつくような感じがしていた。
どんなにスピードをあげても離れない、まるで私の心のように


メリクリウス「あなたは彼に本気を見せてといった、そしてあなたは彼の本気を受け止めた。あれだけ偉そうな事をいったのに
あなたの愛はこの程度だったの?」


歩美はあの場で確かに結婚してといった。それてそれを桂木は本気で受け止めてくれた。あれは私を攻略する為のその場で
ついたその場限りの嘘だった


歩美「あいつの言葉はいつだって嘘ばっかりだった、あのときだってあいつは私の本気に嘘で答えただけ!
別に本気で私を好きだった訳じゃない!」


メリクリウス「本気でそう思ってるの?歩美は?」

メリクリウスの言葉が心にグサリと刺さる。
桂木は確かに攻略の為には平気で嘘を付く。それは分かっていた。
でも桂木はどんなヒロインに対しても真摯にそして一途に攻略《こい》をしていた。


例え女神を復活させる為だったとしてもあの時間はそしてあの瞬間は歩美を攻略《こい》していたのは間違いではなかった。
つまりあれは彼の本気なんだ。どんなに他に理由があったとして桂木は本気だった。


だからこそ桂木は彼女達を攻略することができたのだ。
上辺だけの好きであれば誰も攻略することなどできなかっただろう。


桂木は知らなかっただろうが無意識下で現実《リアル》も虚像《ゲーム》と同じようにヒロインを愛していた
だからこそ、彼は多数の女性を攻略することができたのだ。


そのことには、メリクリウス以外は気付いていなかった。
人間の感情に強く興味があったメリクリウスで無ければ恐らく気付かなかっただろう、何より上辺だけの愛で力を取り戻すほど
女神の力は安くはなかった。


そのことに他の姉妹は気付いていない。


だからこそ歩美の為に助言をやめない、ここで歩美が諦めれば間違いなくこの先ずっと後悔を抱えて生きていく歩美が
不憫でならなかった。


彼の向かう先がちひろでは無ければ彼女も結のようにまだ諦めずにいられたのだろうか?
いや、歩美という人間は誰かの物を取るという行為に対して強い嫌悪感を頂いている。

恐らくちひろとの同時攻略の弊害だろう・・・。

だが、ちひろの告白を聞いてしまった。ちひろの心を何よりも知っているが故に動けない。
動けば彼だけではなく親友まで失ってしまうかもしれない。

それが歩美の心に似合わずもブレーキをかけていた。


メリクリウス「歩美、私はあなたらしくブレーキをかけず、当たって砕けてみるのも一つの選択だと思うの」
歩美「砕けたくないからこうやって!苦しんでるんじゃない!大切な物を失いたくないから!だから!」


歩美はそういってドンドン加速する。
さすがの第1位である。見事な走りだった。


そしてこれも愛が為せる技なのか、これも運命だったのか・・・
女神の力を使った訳じゃない。

歩美「なんで・・・なんでよ・・・」

歩美の目に飛び込んできたのは桂木・・・、そして並んで歩くちひろの姿だった。
終わった、桂木の告白はうまくいったんだ。私の入る余地なんてそもそもなかった。


あくまでも私はこの恋においては傍観者で部外者でそして邪魔者なのだ。


歩美は足を止めず、桂木とちひろの横を通り過ぎる。
歩美「お熱いね~お二人さん!幸せになるんだよ!」


ちひろ「あゆ・・・」
後ろから何かが聞こえたが一目散に走りさる歩美には届かない。


心より親友に贈る言葉。だが、それは歩美の本当の心の言葉ではなかった。

二人からドンドン離れていく。

メイクリウス「ほんとにこれでいいの?」
歩美「いいわけない!」


さっきから胸は痛いし頭も真っ白、それにいつの間にか雨でも降り出したのか頬を水が伝っている。
汗はたくさん出て喉も渇くし最悪・・・。


そんな状態でも歩美は走るのをやめなかった。あの二人から一刻も早く離れたかった。
二人はドンドン小さくなった。そこで歩美は足を止めた。


身体に突然ブレーキがかかったのだ。

メリクリウス「歩美!!」
いつも眠そうにしているメリクリウスから出たとは思えないような声が歩美の身体を止めたわけではない。
歩美はその程度ではとまらない。

だから歩美と身体を入れ替え歩美の身体を止めた。

歩美「なんで止めるのよ!」
メリクリウス「そんな状態で走る歩美は見たくない」


歩美の胸が痛いのは走って苦しいからではなく心の痛み、頬を伝う水は雨ではなく涙、喉が渇いているのは汗ではなく
泣いているから・・・。


歩美の心がこのままでは壊れてしまうそれに、メリクリウスには歩美には聞こえない二人の歩美を呼ぶ声が聞こえていた。

歩美はその場で立ちすくんでいると


肩で息をした桂木とちひろが走ってきた。
ちひろ「歩美、あんた早すぎ、ハァハァ」
桂木はちひろよりも遅れて肩で息をというよりはすでに死にそうだ。


ちひろ「桂木~遅い!」
桂木「仕方ないだろ歩美が早すぎるんだ」
ちひろ「それでも私より遅いのはどうなんよ」
桂木「うるさーい、ゲームなら最速レコードを出したこともあるんだぞ!」
ちひろ「はいはい、それはよかったですねー」


二人の仲睦まじいやりとりに胸が痛む、だけど二人の前で泣くわけには行かない。涙を拭い息を整える。

歩美「なに?私になんかよーだったん?」
何事もなかったように桂木とちひろに向き合う。


ちひろ「桂木からあんたに話があるんだってさ、実はそれであんたを探してたんだけど見つかってよかったよ」


まだ肩で息をしている桂木の背中を思いっきり叩くちひろ
バランスを崩した桂木は足がもつれ、歩美の顔の眼の前に顔がいく、後少しでキスが出来てしまう距離だ。

歩美「なにすんのよ!」
歩美のビンタが桂木に炸裂する。

思いっきり道路の壁に激突する桂木!
歩美「ほんと信じらんない!あんたにはちひろがいるでしょ!それなのにこんなことして!」


歩美の心臓はバクバクと高鳴っていた。走っていた時よりも心音があがっているのはないか
顔も赤い気がする。


歩美(嫌だ、桂木に聞こえちゃう・・・)


小さく深呼吸して落ち着きを取り戻すと
歩美「で、私になんの用な訳?私、忙しいんだけど!」

少し強い口調でまだ道に転がっている桂木に向かって言葉を放つ


桂木「まったく、やっぱりお前はすぐに手がでるな、暴力ヒロインなんて今どき流行らないぞ」
プンプンと昔のギャグ漫画みたいな顔をしながらこちらに詰め寄ってくる。


桂木がまた近づいてくる心音が高鳴る。

桂木「だけどお前は僕の現実《リアル》の最初のヒロインだ!」
桂木は歩美の前で足を止めると歩美の想像とは違うセリフが桂木から飛び出した。


ヒロインと言われ、嬉しかった。でもそれをここで出しちゃいけないこの恋は終わらせなきゃいけない。


歩美「それがなんだって言うのよ、イヤイヤ攻略した中の一番最初だっただけでしょ?」
このドキドキを隠しこの恋を諦めるにはトゲのある言い方をするしか歩美には方法がなかった。


桂木は何も言わない。
だけど後ろから

ちひろ「こいつに告られたんだけどさ、私にはどうしてもこいつの気持ちがわからなかったんよ」
ちひろがゆっくりと語り始める。


ちひろ「どうして私を選んだのか?桂木に聞いたけど釈然としなかった。だから私の考えていたことを聞いたのさ」


沈黙が流れる、この世界に3人しかいないのではないかと思えるほど静かだった。


ちひろ「女神の入ってる子には告白できないから消去法で私のところに来たんじゃないか?って」
桂木「だからそうじゃないって!」
黙っていた桂木が声を荒げる。


ちひろ「確かにさ、桂木はそう思ってる訳じゃないかもしれない。だけど心のどこかで誰かに心残りがあるんじゃないの?」


ちひろ「私にはあんたの告白は歩美の時に感じた本気みたいなものが伝わってこなかったんよ」

桂木「あれは攻略の為に・・・」

ちひろ「違うでしょ、だって歩美はあんたの最初のヒロインなんでしょ、”告白は神聖な物なんでしょ?”」


以前桂木がエルシィに言ったセリフだ。ゲームの告白は神聖な物で何度もするものじゃないって桂木は言っていた。


桂木「なんで、お前がそれを知ってるんだ」
ちひろ「絵里(エルシィ)に聞いちゃった、神にーさまには何者にも縛られず私みたいに自由になってほしいんだって」


桂木「あのバグ魔め、余計なことを・・・」


エルシィには桂木が何かを我慢しているのを感じていた。
最初から一番近くで一緒にいた、エルシィにはその何かに気付いていたのかもしれない。


ちひろ「私に告白してくれたのは素直に嬉しかった・・・でも本当の気持ちを隠して付き合われても迷惑なんよ」
ちひろの目元が赤いことを歩美はやっと気付いていた。

顔を赤らめて赤いのではなく、それは歩美と同じように涙を流して赤くなった目元とよく似ていた。


ちひろ「だから桂木!ちゃんとけじめをつけて、それであんたがまだ私のことを好きだっていうなら、
まぁそのなんだ考えてやってもいいよ」


そういって目をそらすように後ろを向くちひろ


桂木「ほんとに現実女《りあるおんな》は思った通りに動かない、現実はやっぱりクソゲーだ」
桂木「だけどちひろ、ほんとにすまない。お前には僕はどんなに謝っても許されないことをした、もしお前が望むならどんな
願いでも叶えよう、僕は神様だからな」


こんな時でも桂木は自信満々のように見えたがこれはちひろに対しての精一杯の感謝だった。
感情を表に出すのが苦手な桂木にとってはこれが精一杯の謝罪も兼ねていた。


ちひろ「ハハッじゃあくっそ高いギターでも買わせよっかな!」
ちひろは恐らく後ろを向いて泣いているのだろう、ちひろは桂木をけしかけたらこうなることが分かっていた。
それでも、桂木をけしかけた。ちひろにだってプライドがあった。

消去法で本当の気持ちを隠したまま桂木と付き合いたくはなかった。
自分の信念を持たずフラフラしていたちひろは自分のしてきた行いを悔いながらそれでもだからこそ桂木を応援したかった。

 

そんなやりとりを聞いていた歩美は何が起きているのはわかっていなかった。
理解するには歩美の心は高鳴りすぎていた。頭は真っ白で何も考えがまとまらない。


そんな歩美を桂木はまってはくれない。


桂木「歩美、さっきも言った通り、お前は僕の現実《リアル》の最初のヒロインだった」
歩美の眼の前で歩美の目をみてまっすぐと言葉を紡ぐ。


桂木「最初は僕が現実女《りあるおんな》を攻略するなんて無理だと思った、現実《リアル》は僕にとっての邪魔者で
ゲームと僕を遮るただの壁でしかなかった。そしてそこに存在する人間も僕にとっては関心の無いただの虚像でしかなかった」


なんてことを言っているんだこの男は、歩美は桂木の言葉を聞きながらしっかりと桂木を見つめる。
それだけで顔が赤くなり、心臓の鼓動が高鳴る。


桂木「それでもお前は僕を好きになってくれた、絶対に無理だと思っていたことに自信をくれた。そしてそれは僕の
現実での初攻略《はつこい》になった。」


桂木「ちひろを好きになったのは本当だ、嘘じゃないだけど僕にとっての初恋はお前でそして特別なのはやっぱりお前だった。
お前に結婚と言われた時ももっと無難にごまかすこともできた。もっとうまくやることもできた。だけど僕はそれをやめた。」


桂木「最初の告白はやはり神聖なもので僕にとっての初めての恋《こうりゃく》はやっぱり特別だった。
ちひろに告白したときに脳裏によぎったのはやっぱり歩美だった」


桂木「僕はちひろを好きになった理由をもっともらしい理由をつけて自分に嘘をついただけだ。
女神の子達を好きになってはいけない理由を探していただけだ」


桂木は別にプレイボーイという訳ではない自分をヒロインにとっての理想のヒーローを演じていただけだ。
でも、今の桂木は演じていない。ありのままの自分でありのままの自分の言葉を歩美に伝えていた。

 

桂木「僕はやはり最初の恋(こうりゃく)を忘れられない。歩美、僕はお前が好きだ」


桂木は自分の心のままをそのまま歩美へと伝えた。


歩美「・・・・」

歩美は言葉にならなかった。桂木が好き、だけど諦めないといけない。そう言い聞かせて自分に嘘をついて
勝手に終わったことにしていた。それでもやっぱり諦めきれなくてちひろと桂木が歩いてるのを見るだけで
涙が溢れていた。

 

歩美「あんた、何言ってるかわかってんの!ちひろがどんな気持ちかほんとにわかってんの!ちひろはね・・・」
ちひろ「歩美!」


歩美の言葉をちひろが大きな声で遮る。

ちひろ「お願い、歩美。私を言い訳に使わないで自分の心に正直になって・・・じゃないとほんとに桂木もらっちゃうよー」
ちひろとは思えない口調ではじめた言葉は最後はいつものちひろのようになっていたがでも、
それはちひろが親友の為に精一杯しぼりだした言葉だった。ちひろの頬には涙が伝っていた。

 

歩美「私にとってのあんたは、私に告白したくせに他の女の子と仲良くなってちひろまで泣かせて最低な奴。
だけどあんたにとっての初恋だったように私にとっても初恋でやっぱり諦められなくてこんな苦しい思いをするくらいなら
恋なんてしなきゃよかったって思ってた」


歩美はちひろの為と嘘を付くのをやめた。自分の気持ちを素直にいつもどおりにぶつける為に。


歩美「それでもあんたに救われたのは事実でその為にあんたがいろいろ頑張ってくれたのもわかってでも、やっぱり納得
できないこともあって、でもやっぱり最後にあんたを好きって気持ちに気付かされて!もうどうしていいかわかんない状態
だったのにこんなこと言われて、すっごい怒ってるのに・・・・・でもやっぱり私はあんたが好き」


そういって歩美は桂木に飛んで抱きつく。

桂木がそれを支えられるわけもなく後ろに倒れることになるのだが・・・。


メリクリウス(人間の感情はやっぱり奥深い、善や悪では分かちきれない複雑なものが人間にはある、
彼と彼女の物語はまだまだ始まったばかりもっと観察していこう・・・末永く)


~数カ月後~

桂木「だから!もっと加減を覚えろっていつもいつも僕をふっとばしやがって!」
歩美「いいでしょ!私の愛情なんだからしっかり受け止められないあんたが悪いのよ!」


桂木「いい加減ブレーキを覚えてくれ~僕の身が持たない」
歩美「無理無理、私はもう自分の気持ちにブレーキなんてかけない、いつだって全力で全速であんたのもとに飛び込んでやるんだから!」


~fin~